
「資産管理ツールとは」IT資産を見える化し最適運用へ導く基盤
はじめに
資産管理ツールは、企業のIT資産を「運用・改善・最適化」まで支える仕組みのことです。
単なる台帳管理システムではなく、資産情報を活かして生産性向上・セキュリティ強化・コスト最適化を同時に実現する、経営基盤の一部といえます。
本記事では、資産管理ツールの役割と導入効果から、運用を定着させるための実践ポイント、さらにLCM(ライフサイクルマネジメント)によって「続ける仕組み」に発展させる方法までを解説します。
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資産管理ツールが今、企業に必要とされる理由
DX推進やクラウド活用が加速する今、企業におけるIT資産の管理は新たな局面を迎えています。
ここでは、なぜ今「資産管理ツール」が求められているのか、その背景と課題を整理します。
DX・クラウド時代の資産管理に求められる変化
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やクラウド活用が進むなか、企業が保有・利用するIT資産は急増し、複雑化しています。
PCやスマートデバイス、ソフトウェア、SaaSライセンスなどの管理対象は拡大し、「誰が・どの資産を・どのように使っているのか」が把握しづらくなっています。
経済産業省の「DXレポート」でも示されたように、レガシーシステムの維持や属人化した運用を放置することは、企業の競争力や生産性を大きく損なうリスクにつながります。
その後の状況変化に伴い「2025年の崖」は、通称「2027年問題」へと認識がアップデートされていますが、資産の見える化を起点に運用体制を整えることがDXの基盤である点は変わっていません。
出典:経済産業省『産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)』『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』
IT資産管理が企業課題になる背景
従来の資産管理は、台帳やExcelに頼る属人的な運用が一般的でした。
しかし、リモートワーク・クラウド・サブスクリプションの普及によって、「静的な管理」から「動的な最適化」へと発想を転換する必要が生まれています。
資産管理ツールは、データをリアルタイムに自動収集・更新し、利用状況やコストを可視化し、部門をまたいだ最適化を支援するといった仕組みを提供します。
つまり、単なる管理システムではなく、業務効率化・コスト削減・リスク低減を同時に実現する経営ツールとしての役割が期待されています。
Excel管理の限界と「見える化止まり」のリスク
企業が抱えるIT資産は、デバイス・ライセンス・アプリケーションなど多岐にわたります。
しかし、多くの企業では依然としてExcelやスプレッドシートによる属人的な管理が続いています。
手動更新に頼る仕組みでは、以下のようなリスクが想定されます。
情報更新の抜け漏れ
フォーマットやルールの不統一
担当者の異動・退職による引き継ぎミス
これらが重なることで資産台帳の正確性が失われ、「記録はあるが、実態がわからない」という状態に陥ります。
その結果、最新データの所在が不明になり、管理の透明性・スピード・再現性が大きく低下します。
Excelは柔軟で便利な一方で、リアルタイム性・履歴管理・権限制御といった運用基盤としての機能を持たないため、管理対象が増えるほど「属人的運用の限界」が露呈します。
内部課題:導入後に「見える化止まり」になってしまう理由
こうした課題を受けて、多くの企業がIT資産管理ツールを導入しています。しかし、その多くが次の壁、「見える化まではできたが、そこから改善・最適化に進まない」という状況です。
この「見える化止まり」の背景には、次のような運用設計上の課題があります。
- 登録や更新ルールが未整備ツールを導入しても、「誰が・いつ・どの情報を更新するのか」が明確になっていないケースが多く見られる
- 部門間で管理ルールが異なる情報システム部門、総務部門、購買部門など、各部署が独自のルールで資産を管理しているケースも少なくない
- ツールと業務プロセスのズレ「ツールに業務を合わせる」形で導入が進むと、現場が日常業務とツール更新を両立できなくなる
- KPI設計・効果測定がないツールを導入しても、効果を測定するための指標(KPI)が設定されていないと、「どの程度効率化できたのか」「コスト削減効果があったのか」が曖昧なままになる
つまり、Excelの限界を超えても、“業務とツールが連動していない限り”課題は解決しないのです。
資産管理を「使える仕組み」にするためには、業務プロセス・データ更新・効果測定を一貫して設計する必要があります。
資産管理ツールの役割と主要機能「見える化」を超えた運用支援の仕組み
資産管理ツールを効果的に運用するための本質は、「把握 → 制御 → 最適化」というサイクルを継続的に回すことにあります。
ツール導入の目的は「資産を登録すること」ではなく、現場の運用精度を高め、経営判断に活かせるデータを生み出すことです。
「把握」全ての資産を正確に見える化する
資産管理の出発点は、自社の全IT資産を正確に把握することです。
PC・スマートデバイス・ライセンス・クラウドアカウントなどをツール上で一元管理し、「何が・どこで・誰に使われているか」をリアルタイムに可視化します。
この段階では、データの網羅性と更新ルールの徹底がポイント。担当者任せにせず、申請・配布・返却・廃棄までのライフサイクルを明文化し、定期的な監査や自動収集機能を活用して「正しいデータを維持する仕組み」を整えます。
- 資産台帳・インベントリ管理「すべての資産を一元で管理」デバイス・ソフトウェア・ライセンスなどの情報を一元的に登録し、重複や漏れを防止。申請・配布・返却・廃棄までの流れを管理台帳に統合することで、全体最適な管理基盤を作ります。
- 構成情報管理(CMDB)「人と資産を紐づけて可視化」ハードウェア・ソフトウェア・ユーザー・部門などを関連付けて構造的に管理。例えば「この端末は誰が利用しているか」「どの部署の資産か」が即座に把握でき、トラブル対応やセキュリティ監査の迅速化につながります。
「制御」リスクとコストを管理する
次のステップは、把握した情報をもとに制御を行うことです。
ここで重要なのは、セキュリティリスクとコストのバランスを取ること。つまり、リスクを最小化しながらコストを最適化していきます。
例えば、
- セキュリティ連携「リスクを見逃さない仕組み」パッチ未適用や不正操作ログを自動検知し、デバイスを制御。
承認外アプリの使用や古いOS残存などを防ぎ、安全性と運用負荷軽減を両立します。 - ソフトウェア配布・更新管理「標準化でムダをなくす」各端末へのソフトウェアを一括配布・更新することで、環境のばらつきや更新漏れを防ぎ、工数削減と安定稼働を実現します。
- ライセンス・リース契約管理「コストを見える化」契約更新や廃棄を自動通知し、重複契約・未使用ライセンスを防止。保有と利用のバランスを最適化し、ムダのないコスト管理を可能にします。
これらを継続的にモニタリングすることで、「使われていない資産」や「リスクを抱えた資産」を可視化し、リスクとコストをコントロールする体制を構築します。
「最適化」データをもとにコスト・稼働を改善
最後のステップは、収集したデータを活かして運用を継続的に改善するフェーズです。
稼働率や利用率を分析し、余剰機器・遊休ライセンスを特定。利用状況に応じて再配分や契約削減を行うことで、“無駄のないIT投資”を実現します。
- 稼働率・利用率分析「最適配分の判断基盤」どの資産が「使われていないか」「過剰に使われているか」をデータで把握。
更新・リース時期を踏まえた再配置や契約調整が可能になり、コスト削減と稼働効率化を両立します。
このように、資産管理ツールは「見える化」で終わらず、運用品質の向上と継続的な最適化を支える「経営インフラ」として機能します。
資産管理を続ける仕組みに変える──LCM(ライフサイクルマネジメント)の実践
資産管理の実践成功の鍵は、ツールを導入して終わりではなく、「運用しながら改善を続ける仕組み」を定着させることです。
その考え方の中核にあるのが、LCM(ライフサイクルマネジメント)です。
LCMとは、IT資産を「調達→導入→運用→廃棄」まで一連のサイクルで捉え、継続的に最適化していく管理手法です。
単発の棚卸しではなく、運用しながら整えるという発想に立つことで、管理精度・コスト効率・セキュリティ品質のすべてを高めることができます。
LCMを機能させる基本の3つのステップ
1.アセスメント(現状把握)
まずはIT資産・業務プロセス・運用ルールの現状を可視化し、課題を特定します。属人化・重複契約・更新漏れなど、運用上のボトルネックを明確化することがスタートラインです。
2.運用設計と体制構築
次に、業務プロセス・人材・データの3要素を連動させ、「誰が・どの情報を・どう扱うか」を設計。運用担当者の教育や役割分担を明確にし、属人化しないルールベースの管理体制を構築します。
3.改善と継続的なモニタリング
稼働率・利用率などのデータをBIツールで分析し、コスト削減や再配分を実施。定期的なレビューを通じてPDCAを回し、常に最適な状態を維持する循環構造をつくります。
LCMの目的は、IT資産を適切に運用し続けることで、コア業務への集中とコストの最適化、セキュリティ強化を実現することにあります。
一度整えた仕組みを放置せず、業務・人材・データを結びつけて改善を続ける文化を根付かせることが、長期的な資産最適化につながります。
まとめ|資産管理は導入で終わらせない「使われる仕組み」として定着させよう
資産管理ツールの価値は、導入した瞬間ではなく、「使い続けられる状態」を保てるかどうかにあります。
ツールの機能を使いこなすことよりも、運用ルール・人材体制・改善サイクルをどう設計するかが成功の分かれ目です。
導入時の目的設定を明確にし、定量指標(KPI)で効果を測定することで、現場に「成果の見える化」を浸透させることができます。
さらに、LCMの考え方を取り入れることで、資産管理は一過性の施策ではなく、続くDX基盤へと進化させていきましょう。
IT資産の可視化から運用・改善まで──自社に最適化した伴走支援(株式会社システナ)
資産管理のアセスメントから運用設計、定着・改善までを一貫支援しています。
導入設計 → 運用定着 → 改善定着という流れを伴走型で支え、お客様の課題解決に直結する「使われる資産管理」を実現します。
また、自社内での現状把握や運用課題の分析が難しい場合には、外部の専門パートナーに委託して客観的な視点で診断を受けることも有効です。
システナでは、現場の実情に即したアセスメントを通じて、最適な改善策と運用プランを共に設計し、成果定着までを伴走します。
DX化に向けた業務プロセス変革を支援「DX推進サービス」
システナ「LCMサービス」





