
「DX段階」とは?自社の現状を見える化し、次のステップへ進むために
はじめに
DXの段階は、自社のデジタル変革の現在地を示す指標です。
自社のDX推進がどの段階にあるかを正しく把握することは、DXを成功に導く最初のステップとなります。
多くの企業が「DXを進めている」と感じていても、実際には業務のデジタル化にとどまり、データ活用や業務変革まで到達していないケースが少なくありません。
DX推進は、一足飛びに進められるものではなく、段階(フェーズ)ごとに課題を整理し、改善を積み重ねながら成熟させていくプロセスが求められます。
本記事では、経済産業省の「DX推進指標」をもとに、DXの段階を5つのフェーズで整理し、各段階の特徴や乗り越えるべき課題を具体的に解説します。
さらに、自社がどの段階に位置しているのかを見える化し、次の一手を明確にするための考え方と実践ポイントを紹介します。
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DX段階とは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単に業務をデジタル化することではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化そのものを変革する取り組みを指します。
しかし、DX推進の進み具合や成熟度は企業によって大きく異なり、その状態を評価・分類するための指標が「DX段階」です。
企業のDXは、一般的に次の3つの段階を経て進化します。
1.デジタイゼーション(Digitization)アナログ業務のデジタル化
このフェーズでは、紙やExcelなどで行っていたアナログ業務をデジタルデータへ変換し、業務を電子的に処理できる状態へ移行します。
例えば、請求書や申請書の電子化、紙ベースの承認フローをワークフローシステムに統合、RPA(※)による定型作業の自動化などが代表的です。
デジタイゼーションはDX段階の第1フェーズにあたり、業務効率化の基盤を整える「DXの出発点」となる段階です。
※RPAとは、「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略で、人がPC上で行う定型的な作業をソフトウェアロボットが自動で実行する仕組みのことです。例えば「データのコピー&ペースト」「集計表の作成」「レポート送付」など、毎日発生する単純作業を効率化し、人的ミスを減らすのに役立ちます。
2.デジタライゼーション(Digitalization)デジタルを活用した業務改善・最適化
このフェーズでは、デジタル化によって得られた情報を活用し、業務フローや意思決定の仕組みを見直して効率化を図ります。
部署間でデータを共有し、業務の流れを可視化することで、組織全体の連携精度とスピードを高めていく段階です。
例えば、社内データの一元管理やBIツール(※)によるリアルタイム分析など、デジタルを活用して“見える化”と“判断の迅速化”を進める取り組みが該当します。
デジタライゼーションはDX段階の第2フェーズにあたり、この最適化を進めることで、生産性の向上や迅速な意思決定=スピード経営の実現につながります。
※BIツール(Business Intelligenceツール)とは、社内に蓄積されたデータを自動で集計・分析し、グラフやダッシュボードでわかりやすく表示するツールのことです。複数の部署が同じ情報を共有できるため、数字に基づいた意思決定(データドリブン経営)を後押しします。
3.デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)経営・事業の変革
このフェーズでは、デジタル技術を経営や事業戦略の中心に据え、新しい価値やビジネスモデルを生み出していきます。
単に「業務を効率化する」だけでなく、データやテクノロジーを活用して、事業そのもののあり方を変えることが目的です。
例えば、AIによる需要予測や顧客サポートの自動化、IoT(※)で製品の利用状況をリアルタイムに把握する仕組み、クラウドを活用したスピーディーな新サービス展開などが挙げられます。
このフェーズはDX段階の第3フェーズ(最終段階)にあたり、デジタルを基盤に新たな価値創出と企業競争力の強化を実現するステージです。
※IoTとは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とは、さまざまな機器やセンサーがネットワークを通じてデータを収集・共有する仕組みです。例えば製造業では、生産設備の稼働データをリアルタイムに取得し、異常検知や予防保全に活用することでダウンタイムの最小化と保守コスト削減を実現します。また、流通・小売業では在庫や購買データを可視化し、需要予測精度の向上や最適なサプライチェーン管理につなげることも可能です。
このようにDX推進は、3つの段階的なプロセスで進化していきます。
第1フェーズ:デジタイゼーション(Digitization)
ツール導入や業務のデジタル化による効率化第2フェーズ:デジタライゼーション(Digitalization)
デジタル活用による業務プロセスの改善・最適化第3フェーズ:デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)
データとテクノロジーを活用した事業変革
多くの企業がつまずくのは、自社がどの段階にあるのかを正しく把握しないままDXを進めてしまうことです。まずは現状を客観的に可視化し、自社のDX成熟度を知ることが、次の一手を設計するための出発点となります。
DXの段階を把握することは「やっているつもり」を超えて成果を出すための第一歩
DXを推進する上で最も重要なのは、「自社が今どの段階にいるのか」を正しく把握することです。
多くの企業が「DX推進に取り組んでいる」と感じていても、実際にはツール導入や一部業務のデジタル化に留まり、真の変革フェーズには至っていないケースが少なくありません。
自社の課題を見える化し、「何ができていて、何ができていないのか」を整理することが、次のステップを明確にするための第一歩となります。
では、なぜ今、DXの段階を正しく把握する必要があるのでしょうか。その背景には、社会全体で進むデジタルシフトと、企業を取り巻く環境変化のスピードがあります。
「DXの推進方法」については、詳しくはこちらの記事をお読みください。
DXが急務となっている背景
企業を取り巻く環境は、急速に変化しています。グローバル競争の激化、労働人口の減少、サプライチェーンの複雑化など、さまざまな要因が重なり、企業には生産性の向上と迅速な意思決定が求められています。
経済産業省が発表した「DXレポート」では、2025年の崖として、老朽化したシステムの維持・更新コストや属人化した業務構造が、日本企業の競争力を大きく損ねるリスクとして警鐘を鳴らしていました。
現在ではSAP ERPの保守期限延長など状況が更新され、通称「2027年問題」として再認識されつつありますが、レガシーシステム刷新の必要性という本質的な課題は変わっていません。
つまり、DXは単なる流行ではなく、企業の持続的成長と競争力強化に直結する経営課題なのです。
企業内部でDXが進まない理由
DXの必要性が理解されていても、実際の現場では次のような構造的課題によって、推進が停滞するケースが多く見られます。
部門ごとに最適化された業務が、全社的な整合性を欠いている
個別ツールの導入は進む一方で、システム間のデータ連携が不十分である
改善活動が属人化し、担当者の異動や退職でノウハウが失われる
DXの目的が曖昧なまま、「ツール導入=DX」と誤解されている
これらの課題は、「自社がどのDX段階にあるか」を理解せずに取り組むことで生じる典型的な落とし穴です。
経済産業省「DX推進指標」で自社の状況を客観的に把握する
DX推進を持続的に進めるには、自社の現在地を客観的に評価する仕組みが欠かせません。
3つの観点を横軸として整えながら、5つの段階(フェーズ)を縦軸として進化していくプロセスです。それぞれ詳しく解説します。
DXの土台を支える「横軸」3つの観点
経済産業省が策定する「DX推進指標」では、企業のDX状況を次の3つの観点から整理することを推奨しています。
戦略・マネジメント:経営層がDXを経営戦略の中核として捉え、継続的にコミットしているか
ITシステム:全社レベルでデータ連携・基盤整備が進み、業務間のつながりが確保されているか
人材・文化:現場が自律的にデジタル活用を行い、変革を支える組織文化が育っているか
この3つの観点は、DX推進の土台を成す評価軸です。
つまり、「経営の意思」「仕組みの整備」「人と文化」という三位一体の基盤を整えることで、初めてDXが組織全体で機能します。
さらに、この評価結果を踏まえて、自社のDX推進が全体のどの段階(フェーズ)にあるのかを確認することで、現状と理想のギャップが明確になり、次に注力すべき領域を戦略的に特定できます。
出典:経済産業省『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』『産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)』
DXの成熟度を示す「縦軸」5つの段階
DXの成熟度は、一般的に次の5つの段階で整理されます。それぞれのフェーズには、目指す状態と取り組むべき重点領域があります。
1.デジタル化(Digitization)
アナログ業務をデジタルデータへ変換し、情報を扱いやすくする初期段階。
紙やExcelで行っていた業務を電子化し、処理の効率化・ミス削減を実現します。
例:請求書の電子化、ワークフロー化、RPAによる定型業務の自動化。
2.可視化(Visualization)
デジタル化された情報をもとに、業務プロセスやデータの流れを見える化する段階。ボトルネックを把握し、課題を定量的に捉えることで、改善への糸口を明確化します。
例:業務フロー分析、BIツールによるデータ可視化。
3.再構築・最適化(Optimization)
部門ごとに分断されていた業務やシステムを再設計し、全社的な連携を強化する段階。プロセスを横断的に最適化し、データ連携基盤を整備することで、意思決定のスピードを高めます。
例:システム統合、共通データ基盤の構築、部門横断プロジェクトの推進。
4.効果測定・改善(Improvement)
可視化されたデータをもとに、業務改善の効果を定量的に評価する段階。
KPIやダッシュボードを用いてPDCAサイクルを確立し、継続的な改善を支援します。
例:BI・分析ツール導入、KPI管理体制の構築、業務ガバナンスの強化。
5.新しい価値創出(Transformation)
デジタルを事業戦略の中心に据え、企業として新たな価値を生み出す段階。
AIやIoTなどの先端技術を活用し、既存事業の高度化や新規ビジネス創出を実現します。
例:データドリブン経営、AIによる需要予測、新サービスの立ち上げ。
下表は、DXの進化を「フェーズ × 段階 」で整理したものです。自社がどの位置にあり、次にどこを強化すべきかを把握するための目安として活用できます。
DX推進の評価マトリクス
DX段階(縦軸)/ 観点(横軸) | 戦略・マネジメント | ITシステム | 人材・文化 |
第1段階:デジタイゼーション(Digitization) | 部門単位で部分的にデジタル化が進む | 個別ツール導入が中心で連携不足 | デジタル活用は一部担当者に限定 |
第2段階:デジタライゼーション(Digitalization) | DX方針を部門レベルで共有 | データの一元化・共有が一部で進む | デジタルリテラシー向上が始まる |
第3段階:デジタライゼーション(Digitalization) | 改善活動が部門横断で進む | システム連携により業務効率化が進む | デジタル活用が業務標準として定着 |
第4段階:デジタライゼーション(Digitalization) | 経営層がデータに基づく意思決定を推進 | BI・AIなどを活用し分析基盤が整備 | データ活用スキルが全社に浸透 |
第5段階:トランスフォーメーション(Transformation) | DXが経営戦略の中核となり新事業を創出 | システムとデータが全社連携・自動化 | 自律的に変革を続ける文化が根づく |
「DXの効果測定」について、詳しくはこちらの記事をお読みください。
まとめ|DX段階を見える化し、次の一手を設計する
DX推進を成功させるためには、まず自社が今どの段階(フェーズ)にいるのかを正しく把握することが欠かせません。
経済産業省の「DX推進指標」にも示されているように、戦略・システム・人材の3つの観点で現状を見える化し、5つのDX段階で成長を測ることで、やっているつもりから成果を出すDX推進へとステップアップする道筋が明確になります。
DXは単なるツール導入ではなく、業務プロセスを変革し、新しい価値を創出する継続的なプロセスです。今どこに課題があり、次にどこを強化すべきかを可視化することが、変革の第一歩となります。
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