
DXと業務効率化の関係性|失敗しないための課題整理と取り組みのステップ
はじめに
デジタル活用は一過性の流行ではなく、経営戦略の根幹を担う要素になりました。
大企業から中堅・中小企業にまでDX導入が広がるなかで、多くの担当者が抱える課題は「成果をどう数値化するか」という点です。投資効果を明確に示せなければ社内合意形成が難しくなり、継続的な投資も停滞する恐れがあります。
さらにDXは以下の3段階で進み、それぞれ測定すべき指標が異なります。
デジタイゼーション
アナログ情報のデジタル化(例:紙書類をPDF化、手書き伝票をExcel入力)デジタライゼーション
デジタル技術で業務プロセスを改善(例:申請フローをワークフローシステムでデジタル化、Excel集計をBIツールで自動化)デジタルトランスフォーメーション
デジタルを軸にビジネスモデルを変革(例:販売からサブスクへ転換、データ活用で新サービス創出)
本記事では、DX推進がなぜ思うように進まないのかという典型的なパターンから、業務効率化との関係や現場の課題を整理します。そのうえでDXによる効率化の効果と、実現に向けた具体的なステップを解説します。
目次[非表示]
DX推進がうまくいかない典型パターンとは
多くの企業がDX推進に取り組んでいますが、必ずしも思い描いた成果を得られているわけではありません。以下で、代表的な失敗パターンを紹介します。
ツール導入が目的化してしまう
本来DXは企業全体の変革を目指すものであり、ITツール導入がゴールではありません。目的が不明確なまま進めると、操作性の不便さや効果不透明さが原因で現場から不満が噴出しやすくなります。
結果的に従来の手作業へ逆戻りすることも多く、導入そのものが無駄になってしまいます。必要なのは、組織課題を明確化したうえで最適な解決策を選び、KPIに沿った活用方針を設定することです。
部門ごとにシステムが乱立する
営業・人事・経理など部門単位でシステムを導入すると、データ連携が阻害され全社最適化が進みません。サイロ化が進行すると転記や二重入力といった非効率が常態化し、効果どころか新たな業務負担を生み出します。
システムの使い勝手を優先して個別最適に走ることが最大の要因であり、部門横断で活用できる基盤整備が欠かせません。
KPIが設定されず投資対効果が見えない
新技術の導入には必ずコストが伴いますが、数値目標を定めないと成果を説明できません。例えば工数削減率や応答時間短縮率といった指標がなければ、経営層に効果を訴求する材料を欠き、施策打ち切りのリスクが高まります。
売上やコスト削減などの定量指標に加え、従業員エンゲージメントやブランド認知度といった一見数値化しづらい定性要素のある項目も、アンケートや施策前後の比較で定量的に扱えます。
定性要素も定量化の工夫を取り入れるなど柔軟に考えることで、より説得力のある効果測定が実現します。
現場浸透が不十分
新しい仕組みを導入しても、利用者である社員が納得しなければ効果は発揮されません。長年の慣習に基づく業務方法を変更するには心理的抵抗が伴い、トレーニング不足や目的共有不足が原因で活用が停滞します。
経営層が導入目的を明示し、現場がメリットを理解できる説明やサポート体制を整えることで浸透を促進できます。
DXと業務効率化の関係
ここでは、DXにおける業務効率化の定義を整理したうえで、実際に見られる代表的な取り組みを紹介します。
DXが目指す「業務効率化」とは
従来の効率化は単に手作業を減らす取り組みが中心でしたが、DXの視点では「業務の再定義とビジネスモデルの変革につながる効率化」が重視されます。単純作業をシステムに任せ、人材を価値創造に集中させるだけでなく、データを基盤に業務フローや顧客体験を再設計し、組織全体の生産性と競争力を高めることが狙いです。
そのためには、業務の無理・無駄・ムラを徹底的に排除し、データドリブンな意思決定を支援する仕組みを整えることが重要になります。
DXによる効率化の代表例
デジタライゼーションは業務プロセスを効率化しますが、DXの取り組みは、業務効率化を大前提としたうえで、新しい価値創出やビジネスモデル変革へと広がっていきます。
その過程で生まれる「効率化」の代表例は以下の通りです。
取り組み内容 | 具体的効果 |
RPA活用による業務プロセス再設計 | 業務データを蓄積し、プロセス全体の再設計や新サービス企画の基盤に |
データ一元管理による意思決定の高度化 | 顧客情報や販売実績、在庫など部門ごとに散在していたデータの重複を排除し、全社で活用することで迅速な経営判断や新たな収益機会を創出 |
ペーパーレス化・電子契約による取引プロセス革新 | 契約書・請求書・稟議書などを電子化し、契約更新や請求処理を自動化。 継続的な取引をスピーディに回せる仕組みを整え、非対面ビジネスやサブスク型サービスの基盤を支える。 |
コミュニケーション基盤整備による組織横断の最適化 | チャット・オンライン会議・ワークフローを統合し、部門間や取引先との連携を強化。 顧客対応からサプライチェーン管理まで情報共有を最適化。 |
業務効率化の現場でよくある課題
現場での効率化を阻む要因は多岐にわたり、DX推進の障害として繰り返し浮かび上がります。典型的な課題を把握することで、改善すべき領域を明確にできます。
属人化・手作業に依存
Excelや紙による管理が残っていると、業務が一部の担当者に依存しやすくなります。特定の社員だけが知る独自ルールやノウハウが蓄積し、引き継ぎが難航するケースも少なくありません。
マニュアル整備やシステム化を進め、誰でも同じ品質で処理できる環境を整えることが重要です。
部門ごとの効率化にとどまり全社最適にならない
営業・人事・経理などが個別にシステムを導入しても、全社的な視点を欠くとデータの分断が起こります。結果として同じ情報を二重に入力する事態や、部門間の整合性が取れない状況が発生します。
全社最適化を実現するためには、共通基盤を整備し、部門を超えたデータ連携を進めることが不可欠です。
投資対効果が不明瞭
新システムを導入しても、どの程度成果が出ているかを測定できなければ経営層に効果を説明できません。工数削減率・処理スピードの改善・顧客対応時間の短縮など、定量的な指標を設定しないまま進めると、取り組み自体が無意味に映ってしまいます。
結果としてDX施策の継続性が失われ、現場のモチベーションも低下します。
こうした事態を防ぐためには、導入前にKPIを定義し、施策前後で比較可能な形で効果を可視化する仕組みを整えることが不可欠です。
コミュニケーションロス
DX推進は経営層の意向だけでは成立せず、利用者である現場の理解と協力が欠かせません。導入理由やメリットが十分に共有されないと「使いにくい」「余計に複雑になった」と感じる社員が増加します。
以下のポイントを徹底することが重要です。
導入目的を明確に伝える
活用メリットを現場視点で説明する
トレーニング機会を確保する
DXで業務効率化を実現するステップ
DXでの業務効率化を成功させるには、段階的に進めるプロセス設計が必要です。以下では、実務で押さえるべき主要なステップを紹介します。
①現状の業務フローを可視化
まず必要となるのは、既存業務を客観的に把握することです。どの工程で時間やコストが発生しているか、属人化や手戻りがどの部分に潜んでいるかを可視化することで改善の出発点が明確になります。
業務プロセスマッピングやヒアリングを通じて、ボトルネックを洗い出すことが重要です。
②改善すべき領域を選定
効率化の効果が大きく、成果を説明しやすい領域から着手することが推奨されます。例えばルーチン化された定型業務や顧客接点業務は数値改善が明確に表れやすく、現場からの賛同も得やすい対象です。
着手領域を絞り込み、早期に成果を出すことで社内全体への理解と投資継続の流れを作りやすくなります。
③ツール・システムの導入
課題の性質に応じて、最適なソリューションを組み合わせて導入することが重要です。
RPA:ルーチン作業を自動化し業務負担を削減
ワークフローシステム:承認フローを電子化して意思決定を迅速化
チャットボット:顧客対応を即時化し顧客満足度を向上
導入時にはシステムの利用自体を目的化せず、全体の業務設計に組み込むことが重要です。
④定着・効果測定
導入後は運用状況を継続的にモニタリングし、効果を数値として可視化することが欠かせません。ダッシュボードを活用すれば、工数削減率や残業時間削減率などのKPIをリアルタイムに共有できます。
現場責任者がハブ的役割を持ち、経営層には投資成果を報告し、現場には改善提案をフィードバックすることで、持続的な改善サイクルを形成できます。
DXによる業務効率化の効果
デジタル技術を基盤とした取り組みは、単なる作業削減にとどまらず、組織全体の競争力向上につながります。ここでは、DXによる業務効率化の効果を3つの観点から紹介します。
生産性向上
デジタル化によって業務フローの無駄が排除され、従業員一人当たりの処理能力が大幅に高まります。定型業務の自動化により残業時間を削減でき、働き方改革や人件費の抑制にも直結します。
浮いた時間やリソースを新規顧客獲得や新サービス開発などの付加価値活動に再配分できれば、経営全体の成長を加速させることも可能です。
品質の安定化
業務プロセスをシステム化することで入力ミスや確認漏れを減少させ、安定した成果を提供できるようになります。部門横断でデータを一元管理することにより、常に正確な情報を扱える環境が整備されます。
品質の揺らぎがなくなることで顧客対応や商品・サービスの信頼性が高まり、顧客満足度の向上につながるでしょう。
スピード向上
承認フローや情報共有が電子化されると、意思決定までのリードタイムが大幅に短縮されます。さらにチャットボットやFAQシステムを活用すれば、顧客対応を24時間体制で行うことが可能になります。
短時間で成果を出せる仕組みは、環境変化に柔軟に対応するための重要な武器となり、競争優位性を確立する基盤となるでしょう。
DX業務効率化の事例3つをご紹介
DXによる業務効率化は、単なるツール導入ではなく、課題を明確化し、現場に定着させてこそ効果を発揮します。
ここでは、Chatbot・RPA・Power Automateなどのデジタル活用を通じて、業務効率化と運用改善を実現した3つの事例を紹介します。
実際の課題と取り組みの流れを知ることで、自社のDX推進に向けた具体的なヒントが得られます。
事例①食品メーカー:Chatbot(チャットボット)導入で問い合わせ対応を効率化
<Chatbot(チャットボット)運用業務>
【課題】
人事・総務部門に問い合わせが集中し、コア業務に専念できない状況が続いていた。
問い合わせ内容の管理方法が統一されておらず、同様の質問に個別対応するなど、対応が属人化して非効率な状態だった。
【取り組みのポイント】
ベンダーと連携し、FAQの整備とChatbotの設置から導入をサポート
導入後は活用促進に向けた、運用支援を対応
【改善によって得られた効果】
各部門(人事・総務・労政)における問い合わせ対応工数を削減し、コア業務へ集中できる環境を実現
一連の対応実績をもとに問い合わせデータを可視化し、手順書の整備や運用ルールの見直し・提案につなげた
Chatbot設置・導入・活用促進までを伴走し「業務効率化」を実現。
属人化の解消と効率化を両立し、業務改善の持続的なサイクルを確立しました。
事例②建設業:Power Automate Desktopによる転記作業の自動化
<RPA開発・導入支援(Power Automate Desktop)>
【課題】
Excelと計算専用ソフト間の転記作業を手動で行っており、作業工数の増大が課題となっていた。
【取り組みのポイント】
RPAツール(PAD)開発により、単純作業の自動化を実現
ヒアリング段階では、システナの強みである「お客様の要望を正確に把握し、柔軟に対応する姿勢」が評価され、追加開発にもつながる高い満足度を獲得
【改善によって得られた効果】
要件定義から開発・導入支援まで一貫したトータルサポートを実施
手動で行っていた転記作業を自動化し、対応工数を削減
担当者の負荷を軽減し、他業務へリソースを再配分可能に
導入後の他業務展開を見据え、追加要件にも柔軟に対応できる設計を実現
RPA導入を単なる業務自動化にとどめず、将来的な拡張や追加開発にも対応できる柔軟な基盤を構築。
継続的な業務改善とリソース最適化を同時に実現しました。
事例③製造業:RPAの棚卸と再設計によるコスト削減
<RPA再設計・運用改善支援>
【課題】
UiPathのライセンス費用が運用コストを圧迫していた。また、作成者の異動などにより一部のフローがブラックボックス化し、さらに使用されていないフローが未整理のまま残っている状況だった。
【取り組みのポイント】
(フローの整備)既存UiPathフローを棚卸しし、内容を精査して課題を抽出。Power Automateへの移行可否を検証
(移行支援)各部門への移行作業を技術的に支援し、移行判断の根拠を明確化
(保守業務)移行後は保守窓口として技術サポートを提供し、安定運用を継続支援
【改善によって得られた効果】
UiPathライセンス費用の削減により、運用コストを大幅に圧縮
フローの可視化と整理を通じて、必要なシナリオのみを残し、年次棚卸の効率化を実現
Power Automateへの移行により、Microsoft 365との連携が強化され、業務全体の生産性が向上
RPA再設計とPower Automateへの移行を通じて、コスト削減と運用効率化を両立。
Microsoft 365との連携強化により、業務全体の最適化を実現しました。
まとめ
DXによる業務効率化は、単発の施策ではなく継続的な改善プロセスとして進めることが不可欠です。システムを導入して完了するのではなく、効率化の成果を測定し、次の改善につなげる循環が成果の定着に直結します。
業務フローを可視化して改善余地を洗い出す
成果が見えやすい領域から効率化を開始する
適切なツールを導入し全社的な最適化を意識する
効果測定により成果を数値化し、次の改善領域を選定する
例えば承認フロー短縮による意思決定スピード向上が確認できたなら、次は顧客対応や分析プロセスに対象を広げるといった具合に、測定結果を新たな改善策の出発点とします。業務効率化と効果測定を両輪で回すことで、DXは投資効果を持続的に高め、経営成果へ確実に結び付きます。
DX業務効率化を支援するサービス(株式会社システナ)
株式会社システナでは、業務効率化を推進するためのDXサービスを幅広く提供しています。単なるツール導入だけでなく、業務フローに合わせた設計や運用定着まで一貫してサポートし、現場に根付く効率化を実現します。
サービス領域 | 提供内容 | 主な効果 |
アプリケーション開発 | フロント/バックエンド開発から運用・保守までを一貫して支援 |
|
業務アプリケーション導入・活用 | 業務アプリケーションの導入、運用保守、利活用促進までをトータルサポート |
|
RPA導入・開発 | RPAの導入からシナリオ開発、ユーザーサポートまで一貫対応 |
|
システナは、アプリケーション開発から業務アプリ導入・活用、RPA開発までを通じて、継続的な改善を支える仕組みを整えます。
現場の効率化だけでなく、経営成果に直結するDXを実現したい企業様を力強くサポートします。まずは無料相談・資料請求より、お気軽にお問い合わせください。



