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kintoneをもっと使いこなす|活用定着で業務効率化を実現するポイント

はじめに

kintoneは、ノーコードやローコードで業務アプリを構築できる柔軟性が評価され、数多くの企業で導入が進んでいます。

しかし、導入後に「アプリを作ったが社内で浸透しない」「部門間で活用度に差がある」「結局Excelや紙に戻ってしまった」という課題が顕在化するケースも多く見受けられます。

本記事では、kintone活用が停滞しやすい背景やよくある課題を整理し、定着を実現するための具体的ポイントを解説します。

目次[非表示]

  1. はじめに
  2. kintone導入後に直面しやすい壁
    1. 目的が曖昧なまま拡張が先行すること
    2. 情報システムと現場の温度差
    3. 改善活動が一過性で止まること
    4. ルール・ガバナンスの欠如
  3. kintone活用が進まないときによくある課題
    1. アプリが乱立して使いづらい
    2. 現場ユーザーの定着不足
    3. 社内浸透が不十分
    4. ガバナンスが効かない
  4. kintone活用を定着させるためのポイント
    1. 1.目的・KPI・利用範囲を先に決める
    2. 2.現場に合わせたUI/UXの細部調整を継続する
    3. 3.見える化とフィードバックで入力の動機を作る
    4. 4.ガバナンス設計(標準・ルール・権限)
    5. 5.継続改善の運営体制(COE/推進リーダー)
    6. 6.教育・ナレッジ共有・ロールアウト計画
    7. 7.効果測定と次アクション(定着の指標化)
  5. kintone活用事例3つご紹介
    1. 事例①陸運業界:Excel予算管理をkintoneへ移行検証
    2. 事例② 陸運業界:kintoneで営業関連情報を一元管理
    3. 事例③ 金融業界:kintoneでワークフローを一元管理
  6. まとめ
  7. kintoneをはじめとするローコード開発ツールの活用支援(株式会社システナ)

kintone導入後に直面しやすい壁

kintoneは柔軟性の高さが大きな魅力ですが、導入直後は現場での運用に戸惑いが生じやすく、効果が出る前に停滞してしまうことがあります。

以下では、kintone導入後に直面しやすい障壁について解説します。

目的が曖昧なまま拡張が先行すること

kintoneのアプリは直感的に作成できるため、目的が曖昧なまま運用が拡大するケースも少なくありません。紙やExcelでのやり方をそのまま置き換えただけでは、非効率が温存される可能性が高いでしょう。

また、ゴールやKPIを定義しないままアプリを量産すると、どの仕組みを使えば良いか利用者が迷い、効果測定も困難になります。

情報システムと現場の温度差

情報システム部門や管理部門が中心となってアプリを設計した結果、現場の実務に合わない仕組みが生まれてしまいます。導入初期は操作に慣れず「以前より作業が増えた」「画面が分かりにくい」といった不満が噴出する場合もあります。

特に利用方法や利点が十分に伝わらないと、ユーザーは使う意義を感じられず、活用が広がりません。

改善活動が一過性で止まること

導入初期は活発に改善が進んでも、担当者が孤立したり経営からの支援が途切れたりすると、活動が停滞してしまいます。新しいフローを定着させるには時間と試行錯誤が必要であり、導入後も新たな課題が見つかるのが常です。

評価制度や支援体制を整備し、推進リーダーを含めた専任担当者を長期的に支える文化が不可欠です。

ルール・ガバナンスの欠如

kintoneの活用が広がるにつれ、部門ごとに独自のアプリが量産される状況に陥りやすくなります。いわゆる「野良アプリ」が乱立すると、データの一貫性が失われ、全社的な業務効率化やDX推進を阻害します。

ITスキルが十分でない利用者が作成したアプリは、誤作動や誤処理を招くでしょう。命名規則・権限設計・アプリ利用ルールを定めたガバナンスがなければ、品質を担保するのは困難です。

kintone活用が進まないときによくある課題

導入後に順調に見えても、社内での定着が思うように進まず足踏みする企業は少なくありません。kintoneの活用が停滞する背景には、いくつか共通する症状が見られます。

以下で、主な4つの課題について解説します。

アプリが乱立して使いづらい

kintoneは新規アプリを誰でも簡単に作成できる反面、明確なルールがないまま拡張すると似たような仕組みが乱立します。結果として利用者は入力先を迷い、検索や集計の効率も低下します。典型的な混乱要因は、次のとおりです。

  • どのアプリに入力すればよいか判断できない

  • データが複数のアプリに分散し検索性が下がる

  • レポート作成の手間が増え全社的な分析が困難になる

現場ユーザーの定着不足

システム利用が習慣化しない最大の要因は、入力や操作の負担が大きいことです。項目が多すぎたり、並び順が業務手順と合わなかったりすると「結局Excelの方が早い」という判断が生まれます。

摩擦を減らすためには、必須項目の見直し、以下の視点でUI/UX調整を継続的に行う必要があります。

  • 入力ガイドの提示

  • ラジオボタンやルックアップの活用

社内浸透が不十分

アプリを構築しても、利用教育や周知が不足すれば一部の担当者しか利用しません。利用者が少なければデータが蓄積されず、可視化の価値も得られないため、さらに利用が進まない悪循環に陥ります。

例えば、動画マニュアルやQ&A集を用意し、利用目的をわかりやすく説明することで新規ユーザーが安心して利用を開始できます。

ガバナンスが効かない

アプリ作成の自由度が高すぎると命名規則や権限設計が統一されず、データの一貫性が崩れてしまいます。野放しの状態では、誤作動するアプリや誤った処理が定着し、属人的な管理が固定化します。

かといって制限を厳格にしすぎると、現場の自発性を阻害するので注意が必要です。バランスを取るためには、最低限のガイドラインを整え、利用状況をモニタリングする体制が必要です。

kintone活用を定着させるためのポイント

導入したkintoneを「使える仕組み」として根付かせるためには、運用の工夫と継続的な改善が欠かせません。以下では、特に重要となる実践の視点について紹介します。

1.目的・KPI・利用範囲を先に決める

企業がkintoneを導入する際には目的を明確化し、効果測定に必要なKPIを設定することが重要です。目的や範囲を曖昧にしたまま進めると、アプリが乱立し利用者が混乱します。

設定すべき項目

目的

見積リードタイムを30%短縮

KPI

入力率、エラー件数、利用部門数

利用範囲

営業部門の見積~承認プロセス

数値目標を先に定義すれば不要なアプリの拡大を防ぎやすくなり、効果測定も容易になります。

2.現場に合わせたUI/UXの細部調整を継続する

現場ユーザーがkintoneを使い続けるかどうかは、日常業務での操作性に左右されます。入力項目が多すぎる、並び順が業務フローと合わないといった要因があれば、利用を避けてしまうでしょう。

情報システム部門は現場からの声を吸い上げ、必須項目の見直しやスマートフォン画面の最適化を継続することで、定着を後押しできます。

3.見える化とフィードバックで入力の動機を作る

現場ユーザーが入力を続けるためには「入力した情報が役立っている」と実感できる仕掛けが欠かせません。kintoneに登録した情報をダッシュボードに反映させ、期限アラートや案件ボードを活用することで、ユーザーは入力の意味を理解します。

経営層が会議でkintone画面をそのまま利用することも、現場のモチベーションを高める方法です。

4.ガバナンス設計(標準・ルール・権限)

企業がkintoneを全社展開する際には、最小限のルールを整えることが欠かせません。統制がなければアプリが乱立し、データ品質が崩れて全社集計や横展開が難しくなります。

以下のような“型”を用意すると、現場の自律と品質維持の両立が実現可能です。

項目

設計のポイント

命名規則

アプリ・テーブル・フィールドの名称を統一し混乱を防止

プロセス管理

承認フローや差戻しルールを標準化して運用を安定化

権限設計

ロールごとに閲覧/編集権限を分け、情報漏洩を防止

テンプレート化

部門横展開を迅速化するために標準アプリを共有

改修手順

複製→検証→承認→本番反映の流れを明確化

5.継続改善の運営体制(COE/推進リーダー)

企業がkintoneを定着させるには、情報システム部門だけに任せるのではなく、各部門から日常的にkintoneを使いこなすパワーユーザーを推進リーダーとして位置付けることが欠かせません。推進リーダーは現場の声を吸い上げ、改善の実行役となります。

さらに、月1回の運用レビューを実施し、改善要望をバックログとして整理・優先度順に処理していくことが効果的です。

小規模でもCenter of Excellence(COE)的な運営体制を設けることで、改善活動が途切れることなく持続します。

※Center of Excellence(COE)とは、特定領域の知識やノウハウを集約し、全社に展開していくための専門チームや運営体制のことを指します。

6.教育・ナレッジ共有・ロールアウト計画

kintoneの利用を社内に広げるには、教育とナレッジ共有を軸にした計画が重要です。
このような取り組みは「Pilot → Rollout → Scale」という段階的なフレームワークに当てはめると整理しやすく、定着までのステップが明確になります。

1.Pilot(小規模導入):教育フェーズ

小規模に導入し成功体験をつくる段階。基礎的な教育や初期ナレッジを整備し、現場に「使える感覚」を根付かせます。

2.Rollout(部門展開):ナレッジ共有フェーズ

導入部門を広げながら、Q&A集やチートシート、ショート動画といったナレッジを活用し、教育を横展開して定着を促します。

3.Scale(全社展開):ロールアウト計画フェーズ

全社的に運用ルールや教育制度を標準化し、ナレッジを体系化する段階。メンター制度や継続的な研修を組み込み、組織文化として根付かせます。パイロット導入で小規模な成功体験を積み重ね、周知と教育を強化していくことが定着の鍵です。

具体的な教育施策としては、ショート動画やQ&A集、チートシートの整備に加え、メンター制度を導入すると「現場で使い続けられる仕組み」へと育てられます。

7.効果測定と次アクション(定着の指標化)

企業がkintone活用を定着させるためには、効果を定量的に把握する仕組みが必須です。導入後はKPIダッシュボードを活用し、以下の指標を継続的に観測します。

  • 入力率

  • 活用率

  • 処理リードタイム

  • エラー率

数値で課題を明確にすれば、改善余地を示しながら小さな改修へとつなげられます。数か月で活用が安定した段階では、隣接するプロセスへ展開することで業務全体の効率化が広がります。

kintone活用事例3つご紹介

kintoneを導入するだけでは、業務改善は定着しません。重要なのは、現場業務に根付かせ、継続的に活用できる仕組みをつくることです。

ここでは、陸運・金融など異なる業種で、kintoneを活用して業務効率化とデータ共有を実現した3つの事例を紹介します。

導入検証から設計・運用・改善までの具体的なプロセスを通して、自社での活用定着に向けたヒントを得られるでしょう。

事例①陸運業界:Excel予算管理をkintoneへ移行検証

<kintone導入支援(アセスメント+設計)>

【課題】

  • 担当者の記載漏れや数値修正漏れが多く、集計時に予算が合わないケースが頻発。

  • 事務担当が個別に連絡・修正を行うなど、無駄な手間が発生していた。

  • 報告用の集計表やグラフ作成をPowerPointで都度実施しており、報告作業に多くの工数がかかっていた。

【取り組みのポイント】

  • 現行業務をヒアリングし、運用環境や課題を整理

  • 顧客環境でkintoneおよびプラグインの動作を調査

  • 移行検証項目を抽出し、最適な改善策を提案

  • 両チームがMTG・チャットで連携し、スムーズな検討を推進

【改善によって得られた効果】

  • 現行フローをそのまま移行するのではなく、工数削減やミス防止を見据えた業務改善を同時に実施

  • 追加要望や確認事項にも迅速に対応し、双方の認識を揃えながらスムーズなプロジェクト推進を実現

Excel業務との親和性を検証し、移行可否を明確化することで「どの業務をどのようにkintoneへ移行すべきか」の方向性を提示。

ツール活用への理解促進と、今後の業務改善に向けた第一歩を支援しました。

事例② 陸運業界:kintoneで営業関連情報を一元管理

<kintone運用・保守業務支援>

【課題】

  • グループ会社間で顧客情報や営業活動を共有・活用する仕組みがなく、管理手法が統一されていなかった。

  • 部門間の連携が不足し、営業機会の取りこぼしが発生するリスクを抱えていた。

【取り組みのポイント】

  • グループ会社の営業関連情報をkintoneに統一

  • グループ会社ごとの案件をヒアリングし、各社ごとに合わせた仕様を実装

【改善によって得られた効果】

  • グループ全体で情報管理を統一し、倉庫関連データをリアルタイムに共有

  • 各社の業務に合わせたkintone設計で、データ分析と可視化を実現

  • 個社依存をなくし、グループ全体で営業シナジーを創出

情報を分散管理から一元化へと移行し、リアルタイムで活用できる仕組みを構築。

これにより、データに基づく意思決定と部門横断の営業連携が可能となり、グループ全体の生産性向上と組織的な営業力強化を実現しました。

事例③ 金融業界:kintoneでワークフローを一元管理

<kintone導入支援業務>

【課題】

  • 担当者の入力漏れ不備などが発生し、修正による二重対応で作業工数が増大。

  • 入金や契約管理をExcel管理していた。

【取り組みのポイント】

  • kintoneの開発・導入支援により、マニュアル業務効率化

  • ワークフローの可視化

【改善によって得られた効果】

  • 入力負担を軽減し、ミスや重複対応を防止

  • 承認状況をリアルタイムで可視化し、業務スピードを向上

  • 部門間での処理が一元化され、安定した運用体制を確立

属人的なExcel管理から脱却し、全社で一貫したワークフロー運用を実現。

業務の標準化とスピード化を両立し、組織全体の生産性を高めました。

まとめ

kintoneは「自由に作れる」からこそ、導入後の運用設計と定着の有無が成果を左右します。企業が効果を引き出すには、次の流れを意識することが重要です。

  1. 目的・KPI・利用範囲を先に決め、重複するアプリは整理する

  2. 現場に合わせてUI/UXを継続的に調整し、入力の摩擦を減らす

  3. ダッシュボードや通知で“入力が価値に変わる瞬間”を体験させ、会議でも活用する

  4. 標準ルールと権限設計でデータ品質を守り、テンプレートと簡易リリースで横展開を加速する

  5. 推進リーダーと定例レビューで改善を継続し、教育・ナレッジ共有で「人が替わっても使える」環境を維持する

  6. KPIで定着度を測定し、次の小改修や隣接プロセス展開へつなげる

上記のサイクルを繰り返すことで、kintoneは「導入しただけのツール」ではなく、現場を起点に進化を続ける業務基盤へと成長していきます。

kintoneをはじめとするローコード開発ツールの活用支援(株式会社システナ)

株式会社システナでは、kintoneをはじめとするローコード開発ツールを使える仕組みに定着させるための支援サービスをワンストップでご提供しています。

アプリ整理からUI改善・可視化強化・継続的な教育までを包括的にカバーし「導入したのに活用できていない」という状況を「現場で当たり前に使われ、成果が見える」状態へと変えていきます。

サービス領域

提供内容

アプリ棚卸し・統廃合設計

重複用途の整理、命名規約・項目標準の策定、テンプレート化

UI/UX改善と運用ルール整備

入力負担の削減、スマホ最適化、権限・プロセス・改修手順の設計

見える化強化

KPIダッシュボード、未処理アラート、会議で使えるビューの設計

定着支援(継続改善・教育)

推進リーダー組成、月次レビュー運営、オンボード教材整備、横展開設計

「うまく活用できていない気がする」など、課題が明確でなくても、現状の整理や潜在的な改善点の抽出からサポートいたします。お気軽にご相談ください。

システナ|ITマネジメント事業本部
システナ|ITマネジメント事業本部
IT戦略を実現するために、PMOや業務自動化・デジタル化推進、システム構築・運用、ヘルプデスク、人材育成などのITに関する様々なアウトソーシングサービスを提供しています。 お客様のビジネスの発展に寄与できる“お客様にとってのIT&DXサービスNo.1パートナー”を目指し、価値ある情報をお届けしていきます。

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