
AIセキュリティ対策とは?リスクの種類と失敗しないための基本
AI技術の急速な進展に伴い、業務効率化や新規事業開発に向けてAIを導入する企業が急増しています。
しかし、その一方でAIを標的とした新たなサイバー攻撃や、データの取り扱いに関するセキュリティリスクも浮き彫りになってきました。
本記事では、AI導入時に情報システム部門やセキュリティ担当者が押さえるべきセキュリティリスクの種類と、安全にAIを活用するための実践的な対策ステップを分かりやすく解説します。
目次[非表示]
- ・AIセキュリティとは?今すぐ対策が不可欠な理由
- ・AIセキュリティ対策の2つの側面:「守り」と「攻め」
- ・【種類別】AI活用に潜む主なセキュリティリスク
- ・【入力時のリスク】機密情報・個人情報の漏洩
- ・【出力時のリスク】ハルシネーション(偽情報)や著作権侵害
- ・【システムへの攻撃リスク】プロンプトインジェクションによる不正操作
- ・【AIモデルへの攻撃リスク】データポイズニングや敵対的攻撃
- ・【運用・管理のリスク】サプライチェーン攻撃とガバナンス不備
- ・失敗しないためのAIセキュリティ対策 実践4ステップ
- ・AIセキュリティ対策は専門家との連携が成功のカギ
- ・まとめ
- ・株式会社システナがAI時代のセキュリティ運用をトータルサポート
AIセキュリティとは?今すぐ対策が不可欠な理由

AIセキュリティとは、AIシステムそのものの健全性を維持し、不正な利用や外部からの攻撃を防ぐためのセキュリティ対策全般を指します。
現在、多くの企業が生成AIや機械学習を活用したシステムを導入し始めていますが、これに伴い従来型のITシステムにはなかった独特の脆弱性が顕在化しています。
例えば、機密データの不用意な入力による情報漏洩や、悪意あるデータ注入によるAIの誤作動などが挙げられます。
もしセキュリティ対策を怠ったまま運用を続ければ、企業の信頼失墜や業務停止、ひいてはサプライチェーン全体への甚大な被害を招きかねません。
事業の継続性と信用を維持し、安心して最新技術を活用するためには、今すぐに組織的なAIセキュリティ対策を講じることが不可欠です。
AIセキュリティ対策の2つの側面:「守り」と「攻め」

AIセキュリティを理解する上では、対策を2つの異なる側面に整理して捉えることが有効です。
それは、AIシステム自体を守るための守りのセキュリティと、AI技術を応用して既存のサイバーセキュリティ機能を強化する攻めのセキュリティです。
これら双方の視点を持つことで、自社のセキュリティレベルをより強固なものに引き上げることができます。
Security for AI:AIシステム自体を脅威から守る対策
Security for AI(AIのためのセキュリティ)は、AIシステムがサイバー攻撃の標的となることを想定し、その安全性や信頼性を保護する守りの取り組みです。
AIは膨大なデータを学習して動作するため、学習データの改ざんや機密情報の窃取といった脅威にさらされます。
システムに入力されるデータの検査や、AIモデルの保護、適切なアクセス制御などを施すことで、AIが正しく、かつ安全に稼働する環境を維持します。
AI for Security:AI技術でサイバーセキュリティを強化する対策
AI for Security(セキュリティのためのAI)は、AIの高度な学習能力や異常検知技術を活用して、社内のサイバーセキュリティ対策を効率化・高度化する攻めの取り組みです。
日々巧妙化するサイバー攻撃を人間が目視だけで監視・検知することには限界があります。
そこでAIを活用し、膨大なログデータから不審なアクセスやパターンをリアルタイムで検出し、脅威検知から対処までの時間を最小化することで、重大なセキュリティインシデントを未然に防ぎます。
【種類別】AI活用に潜む主なセキュリティリスク

安全にAIを活用する体制を整えるためには、具体的にどのようなリスクがどこに潜んでいるのかを正しく把握しなければなりません。
AIのライフサイクルや利用フェーズに応じて生じる主な5つのリスクについて詳しく解説します。
【入力時のリスク】機密情報・個人情報の漏洩
従業員が生成AIなどに業務データを入力する際、企業の機密情報や顧客の個人情報を不用意に入力してしまうリスクです。
多くのクラウド型AIサービスでは、デフォルトの設定や利用規約において、入力されたデータがAIモデルの再学習に二次利用されることがあります。
これにより、自社の重要データが他者のプロンプトに対する回答として外部へ出力され、予期せぬ情報漏洩につながる危険性があります。
業務で扱うデータの重要度に応じて、入力ルールを定義することが急務です。
【出力時のリスク】ハルシネーション(偽情報)や著作権侵害
AIが生成した回答をそのまま業務で活用することで発生するリスクです。
AIは時に、事実に基づかない嘘の情報をさも真実であるかのように出力するハルシネーション(幻覚)を起こします。
これを検証せずに業務文書や顧客への回答に使用すると、企業の信用失墜や業務上の判断ミスを招きます。
また、AIが生成した画像や文章が第三者の著作物と類似していた場合、意図せず著作権を侵害してしまい、法的なトラブルや損害賠償に発展する可能性も否定できません。
【システムへの攻撃リスク】プロンプトインジェクションによる不正操作
プロンプトインジェクションとは、AIに対する入力指示(プロンプト)に悪意ある命令を巧妙に混入させることで、AIシステムを意図しない動作に導く攻撃手法です。
例えば、システムが設定したシステムプロンプト(制限ルール)を無視させ、本来は非公開であるはずのシステム内部情報や他ユーザーのデータを強制的に出力させる、あるいは外部の不正なWebサイトにアクセスさせるなどの被害が発生します。
これにより、AIを組み込んだ自社アプリが攻撃の踏み台にされてしまうリスクが生じます。
AIプロンプトの書き方について具体的に知りたい方はこちらもぜひご覧ください。
【AIモデルへの攻撃リスク】データポイズニングや敵対的攻撃
AIの学習モデルそのものを狙った高度な攻撃手法です。
データポイズニング(データ改ざん・毒入れ)は、学習フェーズのAIに意図的に誤った、あるいは悪意あるデータを学習させることで、AIの判断基準を狂わせる攻撃です。
また、実稼働中のAIに対して、人間には判別できないわずかなノイズを加えたデータを入力し、AIの誤認識を誘発する敵対的攻撃(回避攻撃)もあります。
製造業の品質検査や自動運転などの画像認識AIがこうした攻撃を受けると、不良品を見落としたり、重大な事故を引き起こしたりする恐れがあります。
【運用・管理のリスク】サプライチェーン攻撃とガバナンス不備
自社が利用しているAIサービスだけでなく、そのサービスが依存している外部のライブラリ、API、開発ベンダーを経由して侵入されるサプライチェーン攻撃のリスクです。
また、組織内でAIの利用実態を管理できていないシャドーAIの横行や、誰がどのデータにアクセスできるかというガバナンスの不備も大きなリスクです。
これらの管理不備により、万が一インシデントが発生しても原因究明や追跡ができず、被害の長期化と対応コストの増大を招くことになります。
2026年度末から施行されるサプライチェーンセキュリティ対策評価制度について詳しく知りたい方はこちらを参考に見てください。
失敗しないためのAIセキュリティ対策 実践4ステップ

セキュリティ対策は、一過性の取り組みではなく、組織全体で持続可能な運用体制を築く必要があります。
ここでは、リソースが限られている企業でも失敗せずに導入・運用を進められるよう、実践的な4つのステップを提案します。
Step1:現状把握とリスクの可視化(アセスメント)
まずは、自社における現在のセキュリティレベルと、どのようなAI活用シーンが存在するのかを客観的に評価するアセスメント(現状把握)を行います。
IPAなどの基準を参考に、自社のITインフラやデータの取り扱い体制にどのような脆弱性があるかを可視化します。
自社のリスクを正確に知り、どこに優先的に予算とリソースを割くべきかのロードマップを描くことが、失敗を防ぐ第一歩です。
Step2:社内ルールの策定と体制構築(ガイドライン)
可視化したリスクに基づき、実務に即したAI利用ガイドラインを策定します。
ガイドラインには、利用目的や利用可能なAIサービスの分類(機密レベルに応じた制限)、禁止事項、入力してよいデータの範囲、生成されたアウトプットの確認方法などを明記します。
また、インシデント発生時の連絡経路(CSIRTなど)の役割や体制を事前に整備し、有事の際に誰が動くべきかを明確にしておきます。
CSIRTについて詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
Step3:具体的な技術的対策の導入
ルールを定めた後は、それをシステム的に担保するための技術的対策を導入します。
どれほど厳しいルールを作っても、人間の注意力だけに頼る運用には限界があるため、機能的な防御壁を構築することが不可欠です。
①セキュリティ機能が搭載されたAIサービスを選定する
AIサービスを選定する際は、入力されたデータが学習モデルに再学習されないオプトアウトが適用されているか、またはAPI経由での利用など、自社のデータプライバシーを保護する仕組みがあるかを必ず確認します。
強固な暗号化通信やセキュリティ基準を満たしたクラウドサービス(例えば、データの保護ポリシーが明確な生成AIプラットフォーム)を採用することで、利用時の情報漏洩リスクを大幅に低減できます。
②ID管理(IAM)やアクセス制御を徹底する
誰がどのAIサービスやデータソースにアクセスできるかを制御するID管理(IAM)を徹底します。
特に業務で機密性の高いデータを扱うAIシステムについては、特権ID管理(PIM)を適用し、不要なアカウントによるアクセスを排除します。
さらに、ログイン時の安全性を高めるため、知識情報、所持情報、生体情報を組み合わせた多要素認証(MFA)を必須化し、なりすましによる不正ログインを防ぎます。
③データの暗号化とログ監視を導入する
AIシステムに送信されるデータ、および蓄積される学習データはすべて暗号化し、万が一漏洩した際も中身が解読されないように措置を講じます。
これと並行して、誰がいつ、どのようなデータをAIに入力し、どのような出力を得たのかのアクセスログや監査ログを漏れなく収集・監視します。
異常なパターンのアクセスや大量のデータ転送を迅速に検知する監視体制を構築することで、被害の最小化に貢献します。
Step4:継続的な運用と教育による定着
技術とルールを導入しただけでは対策は完了しません。
日々の実務に落とし込み、変化する脅威に対応し続ける運用の定着が必要です。
①従業員へのセキュリティ教育・訓練を定期的に実施する
セキュリティ事故の多くは、ルールの形骸化や従業員のリテラシー不足による人為的ミスから発生します。
そのため、全社員を対象とした標的型攻撃メール訓練やAIセキュリティ研修を定期的に実施し、何が危険なのかを自分事として理解させることが重要です。
具体的なトラブル事例を用いた分かりやすい講習を行うことで、ルール遵守の納得感を高め、組織全体の防衛力を底上げします。
②インシデント対応フローを整備し、形骸化させない
どれだけ強固な対策を講じていても、インシデントの発生確率をゼロにすることはできません。
そのため、万が一データ漏洩や不正操作などの異常事態が発生した際に、迅速にCSIRT(シーサート)やシステム管理部門に報告が上がる対応フローを確立しておきます。
報告フローが機能しないと、事後対応に多大な時間とコストがかかり、ビジネス上の致命傷になりかねません。定期的な机上訓練(シミュレーション)を行い、実効性を検証します。
③定期的な評価と改善のサイクル(PDCA)を回す
AIの技術やサイバー攻撃の手口は日々進化しています。
そのため、導入したルールや監視システムが現在も有効に機能しているかを定期的に評価し、見直しのサイクル(PDCA)を回します。
従業員の行動分析やポリシーの妥当性を監査し、法改正や事業環境の変化に合わせてセキュリティガイドラインや監視設定を常に最新の状態へ更新していく必要があります。
AIセキュリティ対策は専門家との連携が成功のカギ

AIセキュリティ対策は、従来のインフラ管理とは異なる広範な専門知識が必要とされるため、自社の情報システム部門だけで全てを賄うのは非常に困難です。
限られた人員で安全なAI運用を実現するためには、外部の専門家と連携することが強力な解決策となります。
専門知識とリソース不足を解消できる
情報システム部門が日常の運用業務や他システムへの対応に追われる中、AIセキュリティのガイドライン策定や脆弱性診断、常時監視の仕組みを自力で構築・検証するのはリソース的に限界があります。
専門のベンダーにアセスメントから体制構築までの実務を依頼し、運用負荷をアウトソーシングすることで、社内担当者は本来集中すべきコア業務や、AIを活用したイノベーション戦略にリソースを集中させることができます。
最新の脅威動向に対応した最適な対策が打てる
AIをターゲットとした攻撃手法や法規制の動向は急速に変化しており、最新情報のキャッチアップには専門的な学習環境が欠かせません。
セキュリティ専門家とパートナーシップを結ぶことで、プロンプトインジェクションやデータポイズニングといった最新の脅威に対する最適な技術的防御(SOCや脆弱性診断)をタイムリーに導入でき、技術の陳腐化や防衛の抜け漏れを防ぎます。
客観的な評価で経営層への説明責任を果たせる
セキュリティ対策を推進する上で、これで本当に安全なのかを経営層や取引先へ説明する説得力のある証跡が不可欠です。
外部の専門機関による客観的なアセスメントや診断結果を用いることで、現状のレベルや対策の妥当性を明確なレポートとして示すことができます。
これにより、経営層からの信頼を獲得し、取引先から求められる高度なセキュリティ基準やサプライチェーン全体の信頼性要件を自信を持って満たすことが可能になります。
まとめ

AIセキュリティ対策は、これからのAI時代にビジネスを成長させ、組織としての信頼性を維持するために避けては通れない最優先課題です。
データ漏洩や誤出力、システム乗っ取りなどの多岐にわたるリスクを完全に一人で、また自社だけで抱え込む必要はありません。
現状の可視化から、実効性のあるガイドラインの策定、技術的対策、教育訓練、そして継続的な改善まで、段階的なステップを確実に踏むことが大切です。
専門知識と実行力を備えた外部パートナーを上手に活用し、リソースの壁を乗り越えながら、安全かつ戦略的にAIを活用できる体制を手に入れましょう。
株式会社システナがAI時代のセキュリティ運用をトータルサポート

システナでは、お客様のセキュリティ環境を多角的にアセスメントし、対策のロードマップ策定から構築、継続的な運用支援までをトータルにサポートしています。
セキュリティツールを導入して終わりにするのではなく、最もリソースを必要とする導入後の運用・改善までを徹底的に巻き取り、安全なAI活用環境の構築をサポートします。
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